当院は脳血管疾患の患者様が多く入院されているリハビリ病院です。
脳血管疾患の病態は様々ありますが、中には脳への障害により視野の半分が認識しづらくなる半側空間無視や体の軸を垂直に保てなくなるPusher現象という症状を呈することがあります。人は姿勢保持や動作を行う際には、「視覚」、「体性感覚」、「前庭系」の情報を統合することで身体を垂直に保持しているとされています。
しかし、このような半側空間無視やPusher現象を呈することで、垂直性に障害が出現し姿勢保持が行えない病態が出現したり、転倒しそうになった際に知覚できずADL動作の阻害要因になるとも報告されています。近年、姿勢の保持に関わる認知的側面として主観的な垂直認知が重要であると指摘されています。
そこで当院では脳血管疾患患者様の垂直認知機能を評価しその方にあった治療アプローチを選択するために「電動型垂直認知測定装置」を導入しています。
・垂直認知の種類について
①主観的身体垂直(閉眼位) SPV (Subjective Postural Vertical)
②主観的身体垂直(開眼位) SPV-EO(Subjective Postural Vertical -Eyes Open)
③主観的視覚垂直 SVV(Subjective Visual Vertical)の3種類に分けられます。
・評価手順
①測定装置へ患者様を乗せ、身体を固定します。
②装置を用い座面を傾斜していき、傾斜位置から真っ直ぐの位置へ戻していきます。
③患者様は真っ直ぐだと思ったタイミングで手元のスイッチを押します。
④患者様の真っ直ぐだと思った位置と実際のずれを見ていきます。
・2.5°±2.5°以内が正常範囲とされており、垂直認知機能の程度を評価していきます。
この装置で評価することの利点は治療アプローチの選択をすることに加え、患者様に垂直を認知させること、自身の垂直とズレがあった際にフィードバックをすることも挙げられます。当院では脳血管疾患患者様の障害に対し、垂直認知機能の評価も詳細に行いより質の高いリハビリを提供できるよう定期的に勉強会も開催し、スタッフの技術向上も積極的に行っています。